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書きおろし・第8回 素朴わんこへの郷愁の巻 [犬ばか歳時記]

書きおろし・第8回 素朴わんこへの郷愁の巻

              

現在、大阪在住の私ですが、先日、久しぶりに昔のテリトリーだった東京都吉祥寺の井の頭公園に、友だちと行ってみました。
土曜日だからなのか、駅から公園まで、人・人・人。
そして、見覚えのない店・店・店。
その合間を縫って、いろんな犬・犬・犬。
こっちのベンチにも、あっちのオープン・カフェにも、わんこ・わんこだ。
5年前までは、こんなには、いなかったはず。

ものすごい細身の、かばんの皮みたいな質感のわんことか、およそ犬種を言い当てることのできぬ最先端の西洋犬、ドーベルマンの小型の置物みたいな犬(動かないけど生きてる)もいて、東京はまるで、犬の万国博覧会ですよ。
雑種は雑種でも、特別な犬どうしをかけあわせた人工的な雑種が目について、チルー的「偶然の雑種」に出会う率は、非常に低かったです。

さて、生物学の世界では、「しつけやすい犬」と「しつけにくい犬」は、遺伝子の形からして違う、ということが、わかったそうです。
そして、しつけやすい犬を選び繁殖して市場に出す、という調整が、近い将来行えるようになるというのです。
そうなると、偶然の雑種はどんどん肩身が狭くなっていきそうです。

                  

私が子どもの時分には、郊外においては、犬がまだ、獣と家畜とペットの間を往来しているようなものでした。
うろつく野良犬に耳を噛まれて耳がとれそうになったとか、川原で野良犬の群れに囲まれて、命からがら逃げ帰ったとかいう話は、めずらしくありませんでした。
狂犬病の恐怖だって、今よりずっと、リアリティーのある話だった。
きちんとした犬を飼っているのなんて、クラスでひとりだったから、学校帰りに何べんも、その犬を見に行ったものです。

そんなころをふと思い出させてくれる、犬ばかおすすめ映画が「天空の草原のナンサ」。
ちょっと「風の谷のナウシカ」っぽい邦題のモンゴル映画です。
実在する遊牧民の一家が演じていて、ストーリーは一応ありますが、描かれる暮らしそのものはドキュメンタリー・タッチ。

                         

物語は、遊牧民の少女ナンサが、洞穴で野良犬を拾ってきて、「ツォーホル」と名づけ、飼い始めるところから展開します。
この雑種犬「ツォーホル」がすばらしいんだ。
たいていの犬映画は、犬の達者な演技に感心させられるものですが、ツォーホルは一切演技していません。
ただ、寝て食って走っているのみです。
お父さんがヒツジの皮をはいでいるときに、そぉーっと寄ってきて肉をひっぱり、叱られているシーンなどは、完全に素(す)です。
編集の妙で上手につないだことで、一応ストーリー展開に組み込まれているわけですが、ツォーホルのあまりに自然すぎるたたずまいが、モンゴルの壮大な景色とあいまって、じわじわと胸を打ちます。

じつは、このツォーホル、あの世界3大映画祭のひとつ、カンヌ映画祭で「パルムドッグ賞」を受賞しています。
パルムドッグ賞とは、観客に深い印象を与える演技をした犬に与えられる賞ですが、審査員たちが「自分ちの犬を思い出す」ということで、なんの演技もしていないツォーホルにこの賞が贈られました。
まさにありのままの雑種犬が、世界的な評価を得たのであります!
 DVDが出ているので、素朴わんこ派の方はぜひ見てみてくださいね。

 


2006-09-25 15:30  nice!(0)  トラックバック(1) 

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